The Interviews

石川淳哉「ソーシャルグッドの男」 Vol.07

『みんな元気になるトイレ』スタート!

災害時、清潔で安全なトイレがないことで命にまで関わることをご存知だろうか。実際、多くの関係者が切望していたにもかかわらず、携帯用トイレやイベント用の簡易トイレなどで対応する次元に留まって思考停止していた。いつ起きるかわからない大災害に備えた大きな資本投下に、自治体予算が使われないからだ。

それを一気に解決するかもと期待されているのが、災害派遣トイレネットワークプロジェクト『みんな元気になるトイレ』。災害時に使用できるトイレトレーラーを全国1471市区町村に設置しようというもので、緊急時には被害甚大地域を助けるために全国から集結する。富士市がスタートさせており、弊社代表石川淳哉はソーシャルグッドプロデューサーとしてプロジェクト推進に関わり、戦略設計を含めたクリエイティブ全般のプロデュースをおこなっている。

このプロジェクトの最大の特徴はクラウドファンディングによって資金集めをしていること。しかもふるさと納税の制度を利用したことで、支援者の負担額がごく少額で済むという画期的な方法が導入されている。これまでになかった新しい視点とやり方で、災害支援をおこなうだけでなく地域を元気にしようという富士市の試みは、自治体主導のCSV(Creative Shared Value)の一例として他の企業や自治体、もちろん個人にとっても大いに参考になるだろう。
(取材・文/水谷美紀)

災害用のトイレトレーラーを全国に

水谷 災害時には色んな問題が起こりますが、被災地のトイレが快適ではない、または数が足りないという悩みはささやかに見えて切実です。今回Readyforのクラウドファンディングで富士市が寄附を募っている『みんな元気になるトイレ』プロジェクトに石川さんも戦略・広報メンバーとして関わっていますが、どういったプロジェクトなのでしょう。

石川 災害時、せっかく助かった命なのに、トイレの衛生問題が原因で感染症にかかり命を失ってしまうケースや、暗く狭く孤立した場所で女性が犯罪にまきこまれることもしばしば起きていました。避難所では50人に一つの安全なトイレが必要だという調査結果も出ましたが、実現には程遠い状態だったんです。そこで企画したのが災害時にトイレトレーラーによって助け合えるネットワークを作るという史上初のプロジェクトです。もしもの時に駆けつけてくれる清潔で安全なトイレトレーラーを全国1471の市区町村すべてに設置することを最終目標にしており、クラウドファンディングではその「一口座主」を募集しています。

水谷 なぜ富士市からスタートしたのですか?

石川 富士市がトップバッターになったのは、富士市の職員の太田智久さんがいたからですね。太田さんとは内閣府の防災リーダーのための情報支援サイト「TEAM防災ジャパン」制作の現場で出会いました。太田さんは一年間、富士市から内閣府防災へ出向していた。もともと富士市は災害対策のレベルが高い都市なんです。南海トラフの最北端に位置していることから大地震に対する危機意識も高い上に、300年ほど前には宝永大噴火と言われる富士山の噴火によって水害や火災が起こり甚大な被害を受けた歴史もあります。そんな富士市が災害時に起こりうる様々な課題解決の一つとしてこのプロジェクトを考案・実施し、僕もお手伝いをしています。

          写真:富士市防災危機管理課の太田智久さん(右)

水谷 まさに社会課題解決への取り組みですね。

石川 以前この連載でSDGsについて話しましたが、世の中を良くする活動というのは、このSDGsが提唱する17のゴールのどれかに必ず入ります。『みんな元気になるトイレ』は、11番目の目標である「住み続けられるまちづくり」に当たる試みに該当します。

※ SDGs…持続可能な世界を目指し「地球上の誰一人として取りこぼさないために」設定された17のゴール・169のターゲットから構成された2030年までの国際目標

▶︎持続可能な開発のための2030アジェンダ(国連広報センターのサイトより)
http://www.unic.or.jp/news_press/features_backgrounders/15775/

愛や勇気がお金と同価値になる時代

水谷 SDGsは近年少しずつ認知されて来ましたが、まだまだ身近なこととしてとらえられる人は多くないと思います。今回のように、これは11番目のゴールを目指すためのアウトプットですよと具体的に見せられると、SDGsが自分も気軽に参加できる身近な課題だという実感が持てますね。

石川 これまで国も企業も自治体もずっとSDGsへの取り組みに逡巡してきました。ところが今年の7月ついに外務省が国連に向けて、SDGsに対し日本も積極的に取り組んでいく事を表明しました。ピコ太郎を使ったプロモーション動画も発表され、それに呼応する形で環境省も声を上げ始めました。一方、「マーケットなくしてビジネスの成長は望めない」つまり経済活動が回っていないと企業がいくら物を作っても売れないと考えた、ネスレなどの企業がSDGsに積極的に取り組み結果を出している状況を見て、それまでSDGsは経済活動に貢献しないのではと危惧していた経団連も参加表明をしました。これには驚きましたね。

水谷 今回のプロジェクトでもっとも注目すべき点は、クラウドファンディングにふるさと納税を組み込んだことだと思います。そんなことが可能だったんだと驚きました。

石川 ふるさと納税の対象には色々なものがあり、災害支援の寄付も募っていますが、クラウドファンディングを取り入れたものは、まだ他にはないですね。返礼品の上限が寄付額の3割に制限された今年4月以降も順調に推移していると聞きます。この控除限度額には個人差がありますが、かなりの額を寄付しても実質2,000円の負担で済むし、クラウドファンディングとふるさと納税は非常に相性がいいと思います。ふるさと納税のサイトには控除金額シミュレーションがあるので、ぜひご自分の限度額を調べてみて、『みんな元気にあるトイレ』の座主になってください。

水谷 お金は確かに必要ですが、負担額は非常に少額であり、それ以上にこのプロジェクトに参加する意志、クリックするアクションが金額の何倍もの価値を生み出していることが面白いです。

▶︎ふるさと納税・控除上限額シミュレーション(さとふる)
https://www.satofull.jp/static/calculation01.php

CSVの新しいビジネスモデルを提案

石川 これがまさに僕がいつも言っている、愛や勇気や技術がお金と同じ価値を持つ時代になったことの表れだと思います。これまで弊社の経済も企業の宣伝費や広報費、求人費などによって回っていましたが、国の予算、県や市町村という地方自治体の仕事も多くなってきました。その枠組みが広がり、クラウドファンディングやふるさと納税など様々な方法で、お金や、お金以外の色んな資本を使ってみんなで経済を回していく時代がいよいよ近づいて来たということでしょう。

水谷 このトイレトレーラーは災害時にしか使えないのでしょうか。

石川 いえ、災害時以外にも地域のお祭りや運動会、お花見やスポーツイベントなど自治体で必要な時に活用されます。お年寄りでも楽に使える洋式ですし、小さなお子さんと一緒に2人で入ることもできます。オプションでバリアフリーにもできるようです。

水谷 それは素晴らしいですね。被災した経験がなくても、仮説トイレにストレスを感じたことのある人は多いでしょうから、自分の問題として想像しやすいです。ところで、自分のふるさとにも元気になるトイレが欲しいと思ったらどうしたらいいのですか?

石川 既に幾つかの自治体から、自分の町でもやりたいと依頼が来ています。一般の方も自分の町にも欲しいと思ったら地元の自治体に呼びかけてください。また、知り合いの方でふるさとの自治体にお知り合いがいたら是非ご紹介ください。僕は今回、ソーシャルグッドプロデューサーとしてだけでなくドリームデザインの代表としてクリエイティブの面でもこのプロジェクトに関わっています。トレーラーには座主になってくれた人の名前を全て入れる予定ですし、1471台それぞれ違うデザインのトイレトレーラーが誕生したら楽しいでしょうね。

水谷 ふるさと納税とクラウドファンディングを組み合わせてCSVをおこなう。新しいビジネスモデルを提示したことにもなりますね。

石川 地球や社会を良くする活動をしたい、それをボランディアではなく継続可能なビジネスにして働きたい。そう考えている人にとって僕達の活動がヒントになったとしたら嬉しいですね。そうやってどんどん世の中をソーシャルグッドにしていくことが僕の理想であり、使命ですから。

▶︎クラウドファンディング Readyfor (レディーフォー)・あなたの街にも救援。災害派遣トイレ網を史上初、富士市から!
https://readyfor.jp/projects/mintore-fuji


▶︎災害派遣トイレネットワークプロジェクト・みんな元気になるトイレ Webサイト
http://corp.tasukeaijapan.jp/toilet/


(Vol.08に続く)

dreamdesign 石川淳哉 junya ishikawa

石川淳哉junya ishikawa

ソーシャルグッド・プロデューサー
1962年大分県生まれ。世界のさまざまな社会課題を解決するために、クリエイティブの可能性を追求する人生と決断。
株式会社ドリームデザイン(HD)代表取締役、株式会社ベターワールドエナジー取締役、公益社団法人助けあいジャパン共同代表理事、一般社団法人with ALS理事、一般社団法人国際平和映像祭顧問

Backnumber

Other Interviews