The Interviews

石川淳哉「ソーシャルグッドの男」 Vol.03

ソーシャルグッドが
人生をもう一段、豊かにする

ソーシャルグッドは地球に暮らす全ての人にとって身近に考えていかなくてはいけない課題ですが、時にはその全てがボランティア活動であるとか、これまで享受して来た豊かさを差し出す犠牲的で禁欲的な行為だと誤解されがちです。
「ソーシャルグッドは楽しくなくちゃ!」と語る石川に、その魅力について聞きました。
(取材・文/水谷美紀)

ムハマド・ユヌスの言葉と出会って

水谷 前回Vol.02で、ソーシャルグッドの取り組みはボランティア活動ではなく継続可能なマネタイズを目指しているとうかがいましたが、それはどのような仕組みなのでしょうか。

石川 大真面目に言いますが、単なるマネタイズだけでなく、お金と愛と勇気を等価交換できるような新しい仕組みを作るのが「ソーシャルグッドの男」を名乗ってからの僕の目標です。「助けて」と言われたら何らかの助けをしたいし、僕も助けて欲しい時は心おきなく「困っています。助けてください」と叫ぶし、助けてもらいたい。世界中がそうなればと思っています。「石川淳哉はもう100%ソーシャルグッドの仕事しかしません」と言っても、僕が一方的に助けてやろうというような偉そうなことじゃなく、誰もが「助けて」と言い合える社会を目指しています。

水谷 経済まで内包した仕組みづくりの発想は、何かきっかけがあったのでしょうか。

石川 ムハマド・ユヌスというバングラデシュの経済学者ですね。グラミン銀行の創設者で実業家ですが、無担保で少額の資金を貸し出すマイクロクレジットの創始者としてノーベル平和賞を受賞しています。彼のある言葉と出会い、自分が誤解していたことが氷解したんです。それは「資本主義はまだ完成されていない。まだ人は資本の利己の部分しか使っていない。利他の部分を使ってこそ資本主義は完成する。みんなで資本主義を完成させよう」というものです。僕はその頃、資本主義も社会主義も成功していないから新しい主義を作らなくてはいけないと思っていました。でもそれはあまりにも大変で、自分には作れそうにないな、と打ちひしがれていました。
そんな時にこの言葉と出会って、資本主義の「資本」とは「人間活動に必要なエネルギー全て」のはずで、お金はもちろん、愛とか勇気とか助けあいとか、全部資本なんじゃないかと思ったんです。金融工学で資本といえばお金であり、お金がお金を生むことを指しています。お金だけじゃなく、お金と愛と勇気を等価交換できる時代を作る。ソーシャルグッドなアクションもボランティアで終わらせず経済的にも成立して次世代につながっていく継続可能な仕組みを作り上げる。これなら自分にもできるぞと思ったわけです。

ソーシャルグッドは楽しくなくちゃ!

水谷 マネタイズを掲げてお金も等価とおっしゃる以上、お金を無化したいという事ではないですよね。前回も少し触れましたが、ソーシャルグッドな活動をしている人の中には、マネタイズを否定したり、禁欲的であらねばと考える人もいます。

石川 違います(きっぱり)。お金はむしろあればあるほどいい。ソーシャルグッドプレイヤーは、オーディエンスからストイックさを強要される局面も確かにあります。でもそれは僕の考えとは違います。最新のチャレンジには、お金がかかることが多いのです。例えば、僕は持続可能な世界に向けて自分にまず出来ることを考えた結果、太陽光発電を自宅に導入し、車も電気自動車に変え、農園(自家消費、有機農法、少量多品種)を作って野菜を作り始めましたが、そこにかなりの時間と、そしてお金を使っています。そのためには当然ですが、お金を生み出さないといけない。そこに疑問はありません。僕はお金を否定していません。縛られてはいけないと思っているけどね。

水谷 ストイックではなく、さらなる豊かさのためのアクションなのですね。

石川 ですね。わがままで最高の贅沢を手に入れかけているんじゃないかと思っています。ソーシャルグッドに限らず全てのクリエイティブ、いや、人生って、脳と細胞が震える状態にどうやって持ち込むかだと思うんです。僕は徹底的に美味しい物を食べたいし、徹底的に気持ち良くなりたい。欲張りな人間ですから、美味しくなくても気持ち良くなくても地球のために我慢しようというのは、どうしても無理なんです(笑)。若い人の中には、最低限の暮らしが出来ればいいのではないかという人が増えているけれど、可能な人はもう少しチャレンジして欲しいですね。一軒家買って、南向きの屋根に太陽光パネルつけて、自分ちの電気を生んで、電気自動車に乗ってどこまでも遠くへドライブ、なんて人生にシフトして欲しいですね。

水谷 もしかして農園も、採れた野菜が美味しくなかったらやってないって事ですか?

石川 もちろん。採れたて野菜は、光合成で溜め込んだショ糖満タンの状態なんです。畑でそれを頂いたら、もうこの世のものとは思えないくらいにめちゃくちゃ美味しかった。かつてのエル・ブジもそりゃあ最高だったんでしょうが、この贅沢をいつも享受し続けるには、自分でやるしかなかった。そして、やっぱり美味しいから続いているんです。ストイックな上に不味いなんて、僕のような人間にはとても出来ないですよ。僕の取り組んでいるソーシャルグッドも楽しくてたまらないからやっているんです。そうじゃなかったら敢えてまだ始まったばかりで育つかどうかもわからないこの領域で「ソーシャルグッドの男」なんて名乗っていません。そもそも僕の会社はドリームデザインという名前なのに、それだとドリームでもなんでもないじゃないですか(笑)。

水谷 それもそうですね(笑)。

石川 我々はもう真っ白には戻れないと思うんです。現代社会に生きている以上、時には様々な矛盾も受け入れていかなくてはならない。その中でそれぞれが人生を楽しみながら少しでもターンオーバーしていければいいんじゃないでしょうか。僕はソーシャルグッドってオセロみたいなものだと思っているんです。真っ黒になってしまったオセロを少しでも白に変えていければいい。いきなり真っ白を目指すんじゃなくてね。ますはそこからだと思っています。

オルタナティブを見つけて黒を白に

水谷 そこには当然、原発の問題も含まれているわけですね。

石川 もちろんです。311が起こって初めて、東京が電気を全く生んでおらず、福島におんぶに抱っこしておきながら自分達は何もして来なかったことを知った人は僕も含めて沢山いたと思います。あれから少し状況は変わったけれど、真っ白にはなっていません。でも僕は、原発をなくす・取り入れるという議論をする一方で、自分がどれだけターンオーバー出来るのかを試してみたらどうかと思うんです。太陽光発電も電気自動車も、経済的に余裕のある人しか出来ないじゃないか、「お前はそれが出来るから言うんだ」と言う人もいるけれど、余裕があるからこそ出来る勇気もあります。それが難しいなら代わりに出来ることを見つければいい。そうやってオルタナティブな可能性を探って、新しいセルからエネルギーを生み出す努力を皆が少しずつ始める。それでも足りなかったらどうするかと考える。これが正しい在り方じゃないかと思っています。

水谷 太陽光発電も電気自動車も、誰もがすぐに取り入れられるものではないですしね。

石川 例えば東京では賃貸マンションに住んでいるから太陽光発電は無理だと言う人も、もし故郷の家が一軒家で経済的に可能だったら、故郷で太陽光発電を始めて、自分の分も電気を生んでもらうという方法もあります。色んな方法はまだまだ見つかるし、その可能性を見つけることもクリエイティブだと思います。自分で野菜を作れないなら、共感できる作り手の野菜を買うだけでもいい。

水谷 大袈裟に考えるから無理だと思ったり、身近で起こっていないから想像力が追いつかないという事もありますよね。エネルギー問題もですが、戦争や平和に対してもなかなか普段は自分の問題として考えられません。そんな中で石川さんとアートディレクターの徳田祐司さんで行なっている『retired weapons』というピースアートプロジェクトは、曲がった発砲筒に花を挿したバルーン型の戦車オブジェというポップなビジュアルもあって、世界中で話題になり広がっています。次回はretired weaponsの成り立ちや活動についてお聞かせください。

Vol.04 retired weapons再始動【前編】誕生秘話
dreamdesign 石川淳哉 junya ishikawa

石川淳哉junya ishikawa

ソーシャルグッド・プロデューサー
1962年大分県生まれ。世界のさまざまな社会課題を解決するために、クリエイティブの可能性を追求する人生と決断。
株式会社ドリームデザイン(HD)代表取締役、株式会社ベターワールドエナジー取締役、公益社団法人助けあいジャパン共同代表理事、一般社団法人with ALS理事、一般社団法人国際平和映像祭顧問

Other Interviews