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操上勝司「未来を描くデジタルマーケティング」 Vol.01

広告=情報を伝えること

株式会社ドリームデザインのホールディングス化によって株式会社idiom(イディオム)の社長に就任した操上勝司。デジタルの黎明期から雑誌編集や広告制作に携わり、長年クリエイテイブを熟知するデジタルマーケティングのプロとして手腕を発揮して来た操上の存在感は、社長に就任したことでさらに輝きを増している。
そんな操上の、時に柔軟で時に鋭い、未来を見つめる視点をご紹介します。
(取材・文/水谷美紀)

idiom 操上勝司 katsushi kurigami

操上勝司katsushi kurigami

1966年生まれ。
最近、自転車に乗って自分は坂を登るのが好きだと気付いたクリエイターです。

編集者からデジタル広告へ

映画学校を卒業し、今の仕事に就くまでに色々な職業を経験しました。写真スタジオにも勤めましたし、出版社で編集者も経験しました。今年で終わりますが、20年くらい多摩美術大学で非常勤講師もしています。

もともとコンピュータは好きでしたが、Macと出会って「これだ!」と思いました。90年代初頭、まだまだデジタル黎明期の頃、コンピュータ関係の出版社で編集者として働いていたのですが、今のように誰でもMacを使いこなせる時代ではありませんでした。ですから編集部でセミナーを開いて使い方を教えたり、前述のように大学でMacを使った演習の指導もしていました。当時Macは1台120万くらいしましたが、上野毛の校舎は学生1人に1台使える環境だったので、あの時の学生はラッキーでしたね。そういえばドリームデザイングループの社員にも当時の教え子がいます。

その頃ちょうど社の方針でデジタルに力を入れるようになり、当時は画期的だったインターネットラジオ放送を始めたり、動画を作ったり、色んな試みをしました。あらゆる物が新しい時代だったんです。それと並行して広告の制作担当者になって沢山の記事広告を作っていましたが、これがまた実に面白く、編集より広告制作に向いているのではないかと考えました。

黎明期にインタラクティブ室を設立

そんな時、石川に声をかけられてドリームデザインに入ることになり、それまでなかったインタラクティブ室を立ち上げました。その頃の広告会社の中では非常に早かったと思います。周囲には驚かれましたね。どうしてデザインを生業にする会社に転職するの? と。転職するなら確実にメディア系の会社だろうと思われていましたから。

でも僕は声をかけられた時にふと、自分を試してみたくなったんです。それまでは出版社の人間として広告を作っていたので、制約もなく自由にやっていました。そんな自分の能力が、出版社を飛び出しても通用するのか知りたくなったんです。

それともう一つ、理由がありました。当時ウェブデザイナーの存在は世間でほとんど認知されていませんでした。デザイナーといえば紙のデザイナー、つまりグラフィックデザイナーを指し、世間で脚光を浴びている「デザイナー」にウェブデザイナーは含まれていなかった。実際ウェブデザイナーという職業もまだ確立されておらず、学校に半年通えばろくに技術がなくてもすぐ仕事が来ましたし、一人でデザイナーもエンジニアも兼ねるのが当たり前でした。僕はそこを変えたいと思ったんです。ウェブデザイナーを一つの職域にまで持って行き、グラフィックデザイナーとの差をなくしたかった。まあ、僕がやらなくてもそうなったわけですけど(笑)、当時はそれを自分の使命のように思っていたんです。

広告とは情報を伝達すること

さて今年の4月に誕生したidiom(イディオム)はデジタルマーケティングをクリエイティブで加速することを掲げ「広告とは情報の伝達である」という考えに基づいて、日々の業務をおこなっています。
例えばランディングページを作る場合、クリエイティブをリッチにして、動画も入れて……といった方法があります。その一方で、ターゲットの興味を分解し、ヒットする10ワード、20ワードに対応するページを10個、20個作る方法もあります。それらを比較し、高い効果が期待されるほうを提案するのも僕らの仕事です。特に近頃は後者のようなアウトプットになることも多いですが、それは時にクリエイティブの人間との摩擦も招きます。アウトプットにおいて高いクリエイティビティを発揮したいと考える彼らとは相反する物であることも多いからです。

けれども僕たちが携わっているのは広告です。ですから自分はデザインする人間だ、クリエイターだ、という考えだけの人は、はっきり言えばダメだと思っています。凝ったグラフィックよりスマホの写真のほうが効くと判断すれば、これでいきましょうと言えないといけない。情報を伝達するために自分はいるというスタンスの人でないと、この仕事には向かないと思います。極論を言えば広告クリエイティブというのは使い捨てで、良い物を作るのは当然ですが、良い物より効果のある物を優先しないといけないのです。

そんなスタンスでずっと広告制作に携わって来ましたが、最近、デジタルを使ってクライアントのために出来ることって広告以外にも沢山あることに気付き、そちらにも関心が向いています。その一つが、企業の人事などに使われているHRT(ヒューマンリソーステクノロジー)です。というわけで、次回はHRTや、僕が最近興味を持っていることについてお話しできればと思います。

Vol.02 数字とブランド、両方を求める顧客に

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