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大城英一郎「ロマンスを生むプロデュース術」 Vol.03

プロジェクトのコントロール法

大人数のプロジェクトを引っ張るプロデューサーが特に注意しているのが、プロジェクトに停滞や混乱を起こさないこと。目的やモチベーションを見失わないためには「ファーストインプレッションが特に大事」と語る、大城の言葉が意味するものは?
(取材・文/水谷美紀)

混乱の原因は初動にあり

プロデューサーの仕事は、凸凹した道をならす作業に似ています。クライアントやスタッフの間で発生するさまざまな誤解や不安、不満を解いたり、トラブルの芽を未然に摘んでおくのも仕事の一つです。

プロジェクトを発進させる際のブリーフィングには様々な個性があり、明確に理解ができる場合も、深い読み解きが必要な場合もあります。いずれの場合も意図を確認しますが、特に読み解きが必要な場合については、誤解と齟齬が生じないように、より深い確認と理解を相互に行い、初めにしっかりコンセンサスを取り、最後までブレさせないように導くのもプロデューサーの仕事です。

また、一つのアウトプットに各部署からの修正やリクエストがびっしり入って戻って来るというケースもあります。それぞれ立場が違うので当然とも言えますが、リクエストを全部入れてしまうと本来伝えたかったことが埋没し、情報の主従関係が変わってしまいます。そんな時はプロジェクトのミッションを再確認してもらい、情報の主従関係をもう一度明らかにしなくてはいけません。そうなると当然、クライアントのリクエストを突っぱねなくてはいけなくなる事も出て来ます。全ての人にいい顔はできません。無謀とも思えるプロジェクトでも実現させるのがPROMANCEですが、それは何でも言う事を聞くという意味ではありません。クライアントに気に入られたくて全てにいい顔をしても何も生まれませんし、そもそもその姿勢はプロフェッショナルではありませんしね。

プロデューサーはプロファイラー?

ただ、拒否や反対を伝える時、もっとも考えなくてはならないのが「それを誰が言うか?」です。言うべき人に言ってもらわないと先に進まないので、人選もタイミングも見極めないといけない。いつ、誰に、どのように言わせるか。その判断ひとつでプロジェクト全体の空気が変わる場合もあるので、プロデューサーには重層的なコミュニケーション能力が求められます。プロデューサーの頭の中は常にプロジェクトに関わる全メンバーの顔と役割、関係性、そしてプロジェクトの現状と問題点があり、何気なく振る舞っているようでいて、実はそれらを掛け合わせた複雑な計算に基づいて行動しています。

そして「それは違います」「それは出来ません」と堂々と突っぱねるには、クライアントと信頼関係が出来ていないといけません。それは互いに尊敬を持ち合っていることが前提になります。

とはいえ、制作する側だけが一方的にクライアントを尊敬し、信頼するだけではパートナーシップは生まれません。「互いに」尊敬し、信頼し合わないとプロジェクトは成立しない。こういったスタンスは、クライアントに対し、何より明確にしておかなくてはならない重要なことであり、その役目を担うのもやっぱりプロデューサーです。

クライアントは世に出すべき商品やサービスのプロフェッショナルです。けれども、それをどう出せばいいかまで考え、アクションを起こすプロフェッショナルではありません。そこは我々の領分であり、我々がプロフェッショナルです。この認識をはっきり持って頂けるクライアントは、非常にやりやすい。尊大な態度をとられることもないし、プロジェクトも円満に進みます。

ですから、その棲み分けを理解されていないクライアントに早く気づいてもらうのも我々の仕事です。しかもそれは早ければ早いほどいい。一度ついた認識や関係性を変えるのは困難だからです。ですから僕は最初の顔合わせ、ファーストインプレッションには非常に気を使います。初回で対等なパートナーシップを築くために、言葉や振る舞い含め、セルフプロデュースにも慎重になりますし、会ったばかりの相手とわずかな会話で人柄を見抜き、円滑なコミュニケーションが取れるように最大限の努力をします。その点ではプロデューサーという職業はプロファイラー(心理分析官)と似た能力が必要かもしれません。と言っても、もちろんそれは相手の顔色ばかりをうかがったり、嘘のキャラクターを作って機嫌を取れという事ではありません。不用意な言動や振る舞いで誤解を生んだり、壁を作ったり、信頼してもらえないというデメリットを避けることは、プロデューサーとして当然の作法なのです。

進行のグラデーションに凹みはないか

スタッフとのコミュニケーションもその点はクライアントと同じです。尊敬と信頼を互いに持つのは当然ですが、さらにスタッフには実作業をしてもらわなくてはいけません。こちらが頼むばかりではなく、彼らからも色んなことを求められます。それは実務的なこともあれば、コミュニケーションの場合もあります。そこを見落としたり後回しにしたことで、プロジェクト全体に響くことも多いにあります。腹を立てるとか作業が遅れるといった分かりやすいことばかりではなく、一見すると順調だけど、何かしっくりいっていない。そんなデリケートな凹みの場合もあります。

プロジェクトに行き詰まりを感じた時は、少し時間を取って集中し、プロジェクトの進行状況を眺めながら問題点を探りますが、とりあえずこれまでの流れを何度も反芻します。それを繰り返していると、ふと、あれ? 待てよ、これって大丈夫なんだろうか、あの人に意図は伝わっているんだろうかと、ハッとすることが出て来ます。プロジェクトの全体像を頭の中でグラデーションにしてみると、上手くいっているところとそうでないところがトーンの差のようにして浮かび上がって来るんです。特定の人や作業が、ちょっと薄く思えたり、沈んで見えたり。そういった凹みは全てを把握しているプロデューサーでないと気づけません。反対に、そこに気づけないとプロデューサーとしてやっていけないでしょう。船の進行を見ながら、一方で船底に出来たわずかな水漏れに気づくのと似ています。

大勢の人間を集めて一つのものを作るというのは、そんなデリケートな機微の掛け合わせです。人は機械ではないし、僕らはただ物を作っているだけではなく、大きなミッションを伝える仕事をしているのですから。

以前プロジェクトの様子を呉越同舟と表現しましたが、船頭役のプロデューサーがどんな配置で呉越を座らせ、細かく潮を読み、櫓をさばいて進めるかにかかっている部分は大きいと思っています。しかも出来れば誰にも不安を感じさせず、スマートに進めていきたい。実は想像を絶するピンチに見舞われ、水面下で孤軍奮闘しているプロジェクトもありますが、自分以外は誰もそのことに気づかず、それぞれの業務に集中できている。そんな風にプロジェクトを動かせてこそプロデューサーだと思いますし、それが僕のやり方です。

Vol.04 プロデューサーに求められる資質
PROMANCE 大城英一郎 eiichiro oshiro

大城英一郎eiichiro oshiro

1964年沖縄県生まれ。
斜めに首を振らないよう、ロマンと創意工夫を旨とする。
株式会社プロマンス代表取締役

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