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2014.03.31 15:44

その写真家はシャッターを押さない。

映画『LIFE』の中で、その時主人公ウォルター・ミティは、乾いたシャッター音を期待していたに違いない。伝説の写真家を捜すため、グリーンランド、アイスランド、アフガニスタンと世界の辺境を旅し、ヒマラヤの尾根を伝いその写真家をやっと捜し当てた。そうして、待ち望んでいた雪豹をNikon F3に装着した超望遠レンズでファインダー内にやっとのことで納めた瞬間のことだ。だが、伝説の写真家ショーン・オコンネルは、「ファインダーを覗け」とウォルター・ミティを手招きする。そうして、二人は、ついぞシャッターを押すこともなく雪豹が岩肌の踊り場を通り過ぎるまで息を殺してずっと見ていた。写真家ショーン・オコンネルは、続ける「それほど貴重ならシャッターを押さず、ずっとこの目で見つめていたいんだ」

わたしたちは、現実世界に生きていて、目標の達成のためにすべての行動が繋がっているかのような錯覚をしている。実は、そこにいること、目撃すること、ともにいること、感じていることの方が遥かに大切なのだということに気付かない振りを押し通す。本当は誰もが気付いているのに、だ。

銀塩フィルム、銀塩の一眼レフ、写真管理部。懐かしいコトバたち…いやいやなつがしがってる場合じゃない。この物語は、表紙の写真入稿が銀塩フィルムで、その一枚が行方を眩ましてしまうってことじゃなきゃ話さえはじまらないのだ。メディア変遷期に、印刷媒体からインターネットへ移行するときのお話だ。だからかもしれないが、この映画の奥底に「これからの映画というメディアの可能性」への挑戦を感じるのは僕だけじゃない筈だ。時代と空想とアフォリズムの掛け算は、見事に成功していると言っていいだろう。この映画、もしかしたら、映画の歴史を塗り替えるのかもしれない。少なくとも僕のアーカイブスのベスト10入りに決定した。

2014年3月31日。明日から消費税増税、世間は駆け込み需要真っただ中、空前絶後の混み様だ。そもそも僕は雪豹とともにいられるのだろうか。人生の大切な部分を変えないと、いそいでシャッター押すだろうし、きっと動画も撮ってしまうだろう。主役であり監督でもあるベン・スティラーが「どうだい、君に出来るかい?」そう言っているような気がする。

To see the world,
世界を見よう
things dangerous to come to,
危険でも立ち向かおう
to see behind walls,
壁の裏側をのぞこう

LIFE!

to draw closer,
もっと近づこう
to find each other,
お互いを知ろう
and to feel.
そして感じよう
That is the purpose of life.
それが人生の目的だから

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