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2014.03.24 01:36

世界の差別や不条理を吹き飛ばす戦い。

その男は、控え室で奮えていた。定刻となり、履いていたスリッポンをサイドラインで脱ぐと裸足でサイドラインを跨いでセンターサークルに立った。そして、静かに絞り出すように君が代を歌った。選手の誰もいない国立競技場に集まった五万人も青い波となって揺れた。その男の背中は、ピッチに最高の敬意を払うとともにフットボールの崇高な魂を両手で大切に扱っているように側にいたボクには感じられた。2002 FIFA WORLDCUP PUBLICVIEWING TOKYOのラモス瑠偉さんの姿は今でも網膜に焼き付いている。

〜私たちは人種、肌の色、性別、言語、宗教、出自、その他の差別は認めないと宣言します。サッカーはスポーツや社会から差別を除く力を持っています。サッカーを通じて仲間とともに差別と戦うことを誓います〜

これは、無観客試合に先立ち行った浦和レッズの阿部勇樹選手の宣誓。そう、もともと差別や暴力と戦うためにボール一つで戦うのがフットボールだ。みんな忘れていたんじゃないかな、フットボールのミッションを。全選手、全サポーターがこのことを想いだすためには必要だったのかもしれない。そんな難しい事を考えずに、好きが高じてなっただけのプロかもしれない。でも、ピッチに入る前には必ず想いだして欲しい。たった一人の愚行からの宣誓。ふたたび起きないように。起さないように。

あと100日で日本代表はブラジルのピッチに立つ。「日本とギリシャが予選突破するだろう。それとは別に、五回目なのだから、そろそろW杯の戦い方を示して欲しい」と、あのドゥンガさんもいっている。世界の優れたフットボーラーはみんな哲学者のようだ。いい動き、いい試合を期待する事はもちろんだが、善き精神で戦って欲しい。そうして、世界中の言葉にできない不条理の数々を吹き飛ばすほどの戦いをして欲しい。彼らならできる、きっと。ボクらもそれを大いに期待しよう。

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